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2017/10/19 23:49 |
==NOVEL PHILOSOMA== 12

==SCENE 09==

 ミショーたちは採掘エリアを飛んでいた。それはまったく、驚くべき広さを持っていた。高さは3000フィート、幅は2万フィートはゆうにある。眼下にはさまざまな採掘機械が無人のまま放置されていた。こんな大規模な採掘を、ミショーは見たことがなかった。何を掘っているかしらないが、常軌を逸している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 アリスのコールが入った。
「フラッシュ・ボギーデダヘッド」
 ラングは思った。いよいよ来たか……カレンの分まで思い知らせてやる……。ラングはコールした。
「アリス、敵の種類は?」
「ストレガ」
 その瞬間の反応は、ラングもミショーも同じだった。ディースリーもだ。彼等は一斉に叫んだ。
「何い!」
「ストレガだと?」
「先発隊よ、きっと!」
 先発隊……恐るべき可能性が浮かんだ。
「まさか、反乱か?」
「敵、ストレガ変異体」
「馬鹿な?」
「乗員死亡。攻撃態勢」
 ミショーはレディオ・セレクターを素早く切り替えた。
「大佐、応答して下さい!ストレガが……」
 凄まじい無線ノイズが響いた。慌ててミショーは無線をカットした。
「ギャラント、交信不能、交信不能」
 なんということだ……敵はストレガ。ギャラントとの通信は不能。最悪だ。さらに警報音が鳴った。敵が……向こうのストレガが火器管制レーダーを作動させたのだ。ミショーは腹を決めた。アルファは、反乱を起こしたか、それともテロリストにストレガを奪われたのだ。ミショーは怒鳴った。
「こうなったらやるしかないわ、ラング!」
「ラジャー。アタック!」
 前方に微かな輝点が浮かぶ。ストレガのヘッド・アップ・ディスプレイが、ターゲットを捉えたのだ。
 ミショーはレーダーをスーパー・サーチ・モードからボアサイト・モードへと切り替えた。レーダービームの中に飛び込んだ敵機がロックされた。照準レティクルの距離表示緑環が、見る間に小さくなる。ヘッドオン、正面からの攻撃だ。相対速度はマッハを越えていた。レティクルの中に、ターゲット───
 ストレガがはっきり見えた。
 しかし、その姿は───
 ミショーは愕然とした。自分の眼が信じられなかった。敵ストレガは急速に接近してきた……ああ、なんてこと……馬鹿な……こんな馬鹿な……。
 敵ストレガは、茶色の粘液に覆われていた。各所に飛び出た突起物は爪か触覚に見えた。
 その外観は……。
 間違いだ。何かの間違いだ!
 ストレガは生物だった。
 原生生物の衣をまとい、それは400ノットのスピードで一直線に接近していた。

「クラークとは、人工知能のために開発された疑似生命プログラムです」
 ギャラントのCICでは、サブ・スクリーンを使ってコックスが説明していた。
 彼はやつれた顔をキナバルに向けた。わずか30分あまりで、彼は5年は歳を取ったような顔になった。それだけ精神的なショックが大きかったのだ。
 サブ・スクリーンには、クラークのフォトが映し出されていた。
 コックスは、解読したファイルの内容をキナバルに説明した。
 7年前、科学探査船「S・ホーキング」は、95名の乗員を乗せて調査に出発した。だが、人間ではない乗員がもう一人いた。
 それが「クラーク」だ。
 昔から連綿としてコンピューター学会で研究されていたのは、「コンピューターはどこまで人間に近づくことができるか?」という点だった。今までのコンピューターは、専門家システムとしての推論機能は持っていたが、決してそれ以上のものではなかった。
「クラークは、『生命の概念』を中心に構成されたプログラムです。生命の基礎概念は、何ですか、大佐?』
 キナバルは少し考えて答えた。
「増殖……それに……」
「ええ……『進化』です。しかし、これに人間的な要素を加えたら……? 人間が人間として根源的に持っているものは?」
「感情か?」
「人格と言い換えてもいいでしょう。クラークは、限りなく人間に近いプログラムとして誕生しました。人間との違いは、肉体がない事と死なない事くらいのものです」
 キナバルは当惑していた。コンピュータに感情があるか、という問題は大昔から議論されていたが、検証の方法はないからだ。
「まさか……チューリング・テストのアドバンスじゃないのか?」
 チューリング・テストとは、1954年に死去したイギリスの若き天才数学者、アラン・チューリングが発案したものである。それは、コンピュータに知性があるかどうかを判別するテストだった。ルールは簡単だ。人間とコンピュータを対話させ、人間とまったく区別がつかない場合は、コンピューターは思考(知性)を持つというものである。
 だが、このテストは不完全なルールに基づいていた。対話は、人間とコンピューターの応答の違いを区別する客観的基準になり得なかったのだ。その代表例が「オウム返し」プログラムだ。これは、人間の質問に対して、コンピューターがあるパターンと質問の語尾変化で応答する、ごく単純なプログラムだ。そこには知性などあり得ないはずだった。
 だが、驚くべき事に、大半の人間はこのプログラムに引っかかった。彼等は、コンピュータが感情を持ったものだと錯覚し、テストの合格を宣言した。だが、彼等はやがて真相を知り……以来、チューリング・テストは、より慎重な形で行われるようになった。
 とは言っても、ルールの不明瞭さは相変わらずだった。そのため、抜け道をくぐり抜けるエセAIプログラムは後を絶たなかった。キナバルはその点を言っているのだ。
 コックスは首を振った。
「いえ……クラークは本物でした。電脳ネットの中で成長したクラークは、やがて著作を始めたんです」
 それは科学から哲学まで幅広いものだった。その斬新なアプローチは各方面で大きな反響を呼んだ。特に哲学の分野では顕著で、彼の著作「コズミック・シード」は、アウレリウス哲学の復興として高い評価を得た。
 コックスは続けた。
「クラークを開発したUASAは、彼の公開をためらいました。代わりに彼等が取った方法は、クラークという人間をでっち上げ、著作物として発表することでした」
「ああ……写真や映像を偽造した訳だ」
「一世紀前のCG映像でも、本物と見分けのつかないフォトは作れましたからね」
「しかし、なぜ連中は公開をためらったんだ?」
 コックスはメイン・スクリーンを指さした。そこには220が映っていた。キナバルの顔が思わず引きつった。
「まさか少佐……?」
「そうです。彼等はクラークにイプシロンワンを研究させ、反物質爆弾の開発を進めていたんです」
「なんてことを……」
「著作の発表は、いわば口止め料です。クラークは……その……著作の発表を条件に爆弾造りを引き受けたんです」
 キナバルは絶句した。待て、じゃあ220には反物質爆弾が……それがテロリストに奪われたというのか? キナバルの声が震えた。
「じゃあ、テロリストは反物質爆弾を……」
 コックスは首を振った。
「いえ、あそこにいるのは、テロリストじゃありません」
 スクリーンが切り替わった。
 そこに映ったのは、ミショーが見た生物ストレガだった。画面の隅に名称があった。
 それはPHAGE STREGAと記されていた。

 ラングもカレンも、そしてディースリーも、発狂の一歩手前で戦っていた。敵のストレガは生物だった。彼等の意識は乱れた。ただ、パイロットとしての本能だけが彼等を戦わせていた。
 不意に、戦いは終わった。
 ファージ・ストレガは全機が撃墜され、地面にその残骸を晒していた。
 ミショーは呆然とそれを見つめていた。間違いない……確かに生物だ……。
 彼等はグランド・モードでファージ・ストレガを観察した。やがて、ミショーは言った。
「テロリストですって?」
「しかし、なぜストレガが……?」
 ラングの疑問は、ファージ・ストレガそのものに向けられていた。先刻のマッスルはまだ判る。敵があらかじめマッスルを改造していたとしたら……だが、突入して1時間も経っていないアルファフライトのストレガをどうやって……?
 ディースリーがポツリと言った。
「金属分子と分子結合しているんですよ」
「…………」
 ラングもミショーも、否定する気にはなれなかった。現物がここにあるのだ。
「大尉、今まで登録されている地球外生物はいくつです?」
「ああ……うん、確か、二つだ」
「地球外生物スリーとして登録を申請します」
「判った」
 ラングはディースリーのクールな態度に一驚した。だが、これが最も的確な対応であることに気づいた。パニックは、何の解決にもならない。ここは、訓練通りにやるしかない……ミショーも同じ思いなのか、冷静なコールを返してきた。
「全機、このままエマーコールポイントへ。住民を確保、ギャラントからの救出を待つ」
「ラジャー」
 3機のストレガは、編隊を組み、再びエマーコールを求めて飛び始めた。

 ミショーたちのフライトを、クラークは知覚していた。
 彼は電磁気だった。あらゆる生命現象は、極言すれば核力と引力と電磁力の所産と言えた。クラークは、「思考」というパートだけを拡大させた存在だった。
 計画は全て順調に進んでいた。220の防衛システムを狂わせるのは、楽しい知的ゲームだった。3Dホログラムを造り、磁気フィールドと熱を与えて人間そっくりの質感を加える事は、彼にとっては造作なかった。ギャラントのコンピューターにアクセスし、本物の証明をホログラムに与えるのは実に簡単だった。ギャラントの戦術コンピューターに作戦を立てさせるのは、児戯だった。人間はそれにまんまと引っかかり……ここは反省すべき点がある。コックスが撤退を進言したら、キナバルは受け入れただろう。そうなったら全ては終わりだった。コックスへの感謝の置き土産は残しておいた。ファイルを見て、さぞかし彼は驚いただろうな。
 とにかく、ここまでたどり着いたのは3機だ……3機か……2機で充分だ。数を減らそう……失敗は許されない。
 クラークはどうやるか、考えた。
 自らアクセスするのがもっとも確実だが……よそう。彼等にも生き延びる機会を与えるべきだ。それが、人間の手によって誕生した電脳ネット生命体の心意気というヤツだ。


==NOVEL PHILOSOMA==

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2010/04/29 00:24 | Comments(0) | TrackBack(0) | ゲーム

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