==SCENE 11==
二人のストレガは地底湖に達していた。2機は湖面上空を急旋回した。
「アリス、ターゲットはどこなの!」
ミショーのヒステリックな声が響く。だが、アリスのコールは変わらなかった。
「ターゲット・コンタクト……ターゲット……」
後方監視スクリーンを見たディースリーは愕然とした。湖面がさざないでいる……まさかあれは……。彼は怒鳴った。
「大尉!」
次の瞬間、湖面を割って巨大な影が立ちふさがった。
「コレは……」
ミショーは愕然として息を呑んだ。その姿は、まるで古代の水生恐竜そのものだった。違いは……表情と言えるものがないことだった。顔に当たる部分が、東洋に伝えられている能面そのものだった。
「コーション。ターゲット攻撃態勢」
怪物は微かに首を振り、ミショー達へと視線を向けた。ミショーは兵装スイッチを跳ね上げ、静かに狙いを定めた。
そして、トリガーを引いた。
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キナバルもコックスも憔悴しきっていた。
オペレーター達も、虚ろな視線をスクリーンに映る220へと向けていた。降下させた偵察用ドローンの送ってきたデータが、一同の精神を完全に叩きのめしていた。
扉の開く音と共に通信長が入ってきて、キナバルに通信文を渡した。
コックスには、読まなくても内容が判った。通信文を読み終えたキナバルの顔は、ゆっくりとコックスを見た。実際の彼の年齢より、20年は老け込んで見えた。
「少佐、大統領命令だ。マーヴをランチ・シークエンスに移行しろ」
「イエッサー」
コックスは一切の思考を停止し、ただ命令に従うことにした。大統領は、220を核ミサイルで消滅させろと命じたのだ。
彼は淡々と発射準備に取りかかった。
水面に出ていた頭部がゆっくりと沈んでいくのを、ミショーは凝然として見つめていた。ありったけのミサイルと火力を叩き込み、化け物を辛くも倒せた……。
その代償として、ミショーのストレガはミサイルを全て撃ち尽くしてしまっていた。アサルト・ブレイカーもエネルギー残量はゼロ。レイブレッドも撃ち尽くした。残ったのはバルカンの砲弾が97発……。
戦闘能力喪失と言っていい。ディースリーの方も似たようなものだろう……ヘッド・アップ・ディスプレイには、生存者の位置ポイントがマーカーで示されているが、素直に喜ぶ気持ちにはなれなかった。これでどうやって生存者を確保し、救難機の到着まで維持しろというのか? まして、アリスはブレイクダウン寸前の状態だ……。
==NOVEL PHILOSOMA==